エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
 もはや、黒沢に選択の余地は残されていない。

 力なく頷くと、やっとで

「連れ出す前にある物を回収させてくれ。」

と懇願した。

 黒沢は、まず、弥生の首筋を見てペンダントがないのを確認すると、弥生に

「オイ!ペンダントはどうした!中条にもらった事は分かっているんだぞ!」

と聞いてみた。

 弥生は、勇が持っていると思っているので、勇から気を反らす為に、

「あれは今頃、マスコミの手に渡ってるハズ。」

と言った。

 黒沢はキレて、

「何!?ふざけやがって!!」

と脅しつけたが、弥生は怯まない。

 すると、今度は勇を見て、あの青いペンダントではないが、ハート型のペンダントをしている事に気が付いたので、とりあえず引きちぎって没収した。

 すると、その様子を見ていたブローカーのリーダーが、

「坊や、まだまだ青いな。また失敗か?もう時間がない。こいつらは貰っていくぜ。」

と完全に黒沢をバカにしたが、黒沢は

「ああ、もういい。勝手にしてくれ。」

と承諾した。

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