H ~ache~
side:H

--環が施錠した部屋は、店のマスターキーで再び開けられ、男が数人部屋に入り照明をつけたが、そこはすでに無人だった--

「早瀬様、誰もいないようです」

「…」

早瀬と呼ばれた男がテーブルに置かれていたビニール袋を見つけた。

袋を手に取り中を見ると、買ったばかりのジャスミンティーとチョコレートが入っていた。

「カメラの録画内容を見せろ」

「はい!」

部下と思われる男が部屋を出ていった。



「早瀬様こちらの映像です」

廊下を映した映像には、女がマネージャーを足払いにして何かで叩く姿が残っていた。

それからしばらくたち、鞄を抱えた女が店の裏口から出ていく映像。
店の裏口で何かを置き、何故か小さく手を振っている。

(何をしている?)

「店の裏口を調べてこい」

早瀬が命じると、体格のいい男が部屋を出て行ったのと入れ替わりに黒服とサブマネージャーが部屋に入ってきた。

「オーナー、お呼びでしょうか」

「マネージャーの部屋にいた女は誰だ」

早瀬に聞かれたサブマネージャーは、ああ。と頷くと答えた。

「月に一度来られる会計部門の人です。確か…及川さん、でしょうか」

「その女は何をしていた?」

「いつもマネージャーからカギを預かり、会計データをチェックしています。会社へ持ち帰り本部へ報告する資料を作成していると聞いていました」

サブマネージャーが答えると、黒服が手にしていた鍵を早瀬に見せた。

「先ほど慌てて帰られました。私はカギを受け取りサブマネージャーに返すように頼まれました」

「…分かった。下がっていい」

部屋を出て行った男が戻り、手には傘を持っていた。

「早瀬様、裏のごみ置き場にこれが置かれていました」

少し濡れている折り畳み傘は、真ん中あたりからぐにゃりと曲がり、使いものにならないように見えた。

(あの男をこの傘で殴ったのか…そしてこれを捨てたときに傘に手を振った?…)

「分かった。その女を調べろ」
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