未知の世界5
「かなっ!」
大きな声と共にお尻が浮くほど驚く。
屋上について、10分も経たないうちに気づかれてしまった。
早すぎる…。
「ったく、何してるんだよ。」
相当焦らせてしまったのか、声を震わせている幸治さん。
「ほら…戻るぞ!」
ベンチに座ったままの私を促すように言う。
それでも動かない私を見て、私の隣に座る。
「…なんかあるんだろ?」
焦っていた声から落ち着いた声に変わり、顔を上げてみる。
「今回の検査のことも、いやそれよりももっと前の…移植手術のことにも。」
ずっと気づかれていたんだ。
誤魔化してきたけど、幸治さんには気づかれていた。
私が本当に不安におもっていたこと。
私が話し出すのをじっと待っている。
それでもしびれを切らして、
「もう病室行くぞ!こんなところいたら、風邪引くだろ。」
口を開く前に、幸治さんに抱きかかえられ、屋上を後にした。
私を抱き上げた幸治さんは、私の体温に驚いたような顔をして、急いで病室に向かった。