未知の世界5

『「かなちゃんっ!」』





病室の扉が開くと同時に、お父さんと進藤先生が私の名前を呼ぶ。







石川先生が聴診器を首にかけて待っている。






みんなが焦った顔をしている。






ベッドに降ろされるやすぐにパジャマの胸元が開かれると、石川先生の聴診器が胸に当たる。






ひんやりと冷たい聴診器に驚き、手で払いのけようとする。






すぐに幸治さんに手を掴まれ、診察が続けられた。







と同時に体温計が胸に差し込まれる。







いつものことだけど、されるがままの私。







「心音も肺も大丈夫そうですね。」







聴診を終えた石川先生が私ではなくて、私以外の先生に言う。






『熱は微熱程度か。』






幸治さんが体温計を確認してつぶやく。








『ったく!バカなことするなよ!』







突然の幸治さんの声に、思わず驚く。







『今回の検査は今後の生活に大きく関わるって知ってるだろ?』







知ってるよ…。








知ってる…。







「少しでも生きるためにでしょ。」








言ってしまった…。







私の一言で部屋の中の空気が一気に下がった気がした。






お父さんや進藤先生が一瞬動いたのが、目に入った。






『かな…。』









幸治さん、何か言ってよ…。







「知ってるよ。私だって医者になりたくて勉強したんだもん。







知ってる…。







心臓移植したからって、みんなと同じくらいは生きれないってこと。」







『……。』







幸治さん…。何か言ってよ。







あ…。








涙が出そう…。








言葉にしたら悲しさがさらに増すことくらい分かってたけど。






「しょうがないことだもんね…。」







『かなちゃん…、それは気にしなくていいから。






日本では海外と違って、移植後長く生きてみえる方はたくさんいるんだからな。』






お父さんが言う。






でも早く死ぬ人もいるだもん。







そう思うと涙が止まらなかった。






それだけじゃなくて、それから幸治さんが一言も喋らなかったことに、さらなる不安を覚えた。
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