俺様社長と極甘オフィス
 おかげで彼の秘書は男性のみ、という暗黙のルールさえできていたそうだ。既婚女性にとっては、なかなか忙しく、不規則な仕事だったりもするし。

 しかし正一氏としては、やはり女性のきめ細やかさが必要だろうと、女性秘書をつけるように、とずっと言っていたらしい。そんなときに、なぜか私に白羽の矢が立ったのだ。

 どうして私なのか、という問いかけに対して、社長は少しだけ言い淀んだ。

『どうだろうなぁ。秘書としては、藤野くんはまだまだだけれど、語学も堪能でヘリの操縦もできる。それに私が言うのもなんだが、藤野くんは、こう、今まで京一が連れていた女性とはどこかタイプが違うというか、間違いが起こりそうにないというか……』

 取りようによってはかなり失礼にあたりそうだが、それには納得できた。あの見た目、若くして専務という地位、言い寄ってくる女性は秘書だけではないだろう。

 そんな中で、彼がどんな女性を選んできたのかなんて簡単に想像がつく。

『うん、やっぱり藤野さんは違うな』

 地味な外見、好きなのはヘリコプターの操縦で、デートかと訊かれたときも即座に否定した。女性らしさの可愛らしさもなければ、そんな素振りも見せない。 

 要するに私は、彼にとってどう頑張っても恋愛対象にはなりえないし、仮に私が彼のことを好きになって振られたとしても、操縦士の仕事を本命としているうちは、けっして仕事を辞めないだろうと見ているわけだ。
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