俺様社長と極甘オフィス
 商談は、お昼前にはこちらにいいようにまとまったらしく、私も先方を無事に見送ることができた。そして部屋に戻ってきた社長に、いつものように午後のスケジュールを告げ、さらに今日もパスワードが解除できなかったことを報告する。

「やっぱり駄目か」

 社長はジャケットを脱いで、奥の個人用ソファにだらしなくもたれかかる。いつもなら、たしなめるところだが、私はなにも言えなかった。すると社長が困ったように笑った。

「そんな顔するなって。藤野が悪いわけじゃないんだから」

「いえ、お役に立てずに申し訳ありません」

 頭を下げると、社長が私をちょいちょいと手招きするので、私は躊躇いながらも近寄った。

「どうされました?」

「こっちに来て」

 十分に来たと思うのだけれど。そう思っていると、社長は私の手を引いて、自分の方に抱き寄せた。私はバランスを崩しながら膝を折り、微妙な体勢のまま社長に抱きしめられる。

「ちょっと充電」

「充電、ですか?」

 意味が分からずに私はおうむ返しした。社長は一度、腕を緩めると、改めて私をソファ座らせて、後ろから抱きしめるような形をとる。背中越しに伝わる体温に心臓が加速した。
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