俺様社長と極甘オフィス
「冗談なのに、また真面目に返してしまったので」

 正直に告げると、社長は声をあげて笑った。そのことにこちらが驚く。そして、私の前に回されていた手が頭の上に乗せられた。

「もう本当に参るよ。しょうがない、そこが藤野の可愛いところでもあり、憎いところでもあるからなぁ」

 意味が分からないままおとなしく頭を撫でられる。とりあえず怒ってないのならいいんだけれど。そして、そっと回されていた腕が離されると、密着していた部分に空気が触れ、なんだかすごく名残惜しくなる。

 そんな考えを慌てて振り払った。

 私がゆっくりと立ち上がると社長も遅れて立ち上がる。社長の方に向き直ると、思ったよりも近い距離に今更ながらに動揺した。

「ありがとう、これで明日も仕事を頑張れそうだよ」

「ならよかったです。お疲れさまでした」

 動揺を悟られたくなくて、事務的に告げてから私は頭を下げた。すると社長から「ねぇ」と呼びかけられたので顔を上げて視線を合わす。いつになくまっすぐな瞳がこちらを見下ろしていた。

「これは仕事じゃないって言ったけれど、藤野は俺じゃなくても、お願いされたらこんなことをさせるの?」

「そもそも私にこんなお願いをしてくるのは社長ぐらいしかいないと思いますが」

「質問をすり替えない」

 少しだけ怒気が含まれている声に、私は背筋を正す。そして頭の中で考えを巡らせた。もし社長じゃなかったら、たとえば金本さんにお願いされたとして。
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