上から先輩
「どこか体調悪いんですか?」
「いや、別に……」
顔を覗き込むと気まずそうに視線を逸らされた。と同時に茶髪くんが右腕を隠したことにも気づいてしまった。
「怪我、したんですか?」
「ち、ちが……っ!」
「嘘はいいです。手当しますから、見せてください」
「違うっつってんだろ!」
「………」
初対面で思いっ切り怒鳴られた。
やっぱり前言撤回。全然いい人じゃなさそう。
「もういいです、勝手にします」
「は?って、ちょっ、やめ……!」
隠された右腕とは反対の左腕を掴むと、そのまま無理やり椅子まで引っ張り込んだ。
できるだけ素早く戸棚から救急箱を取り出して茶髪くんの目の前に座る。
「さあ、もうここまできたんですから観念して右腕見せてください」
「……強引っていうか、横暴すぎ」
「何とでも言ってください。一応、そっちの体を心配してるんですから」
「………」
「ほら、はやく」
消毒液片手に茶髪くんをじっと見据えると、やがておずおずとした様子で右腕をさしだされた。
見てみると、肘の辺りに三本ほど引っ掻いたような傷があった。
「どうしたんですか、これ」
「……関係ないだろ」
「まあそうですね」
どうやら理由までは聞かれたくないようなので、大人しく手当てだけしてあげることにした。