上から先輩
Ep.02
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獅坂 百(しざか もも)と言えば、うちの学校に通う人間なら誰もが知っている人気者だ。
スラッとした高身長と目鼻立ちの整った美形、おまけにモデルをやってるとか何とか。
私も入学したばかりの頃に噂だけは聞いていたが、実際に本人を見たことはなかった。
そんな先輩と初めて話したのは、確か高校一年の夏だった。
その日、私にしては珍しく体調を崩して保健室で寝ているところに一人の生徒がやってきた。
「失礼します……」
男子の声がして、慌ててベッドから起き上がる。
カーテンの隙間から入り口を見てみると、茶髪のちょっとチャラそうな男子が入ってきた。
「すみません、先生いますか」
見た目はチャラそうだけど、言葉遣いはしっかりしてるし、いい人そうかも。
「あのー……」
カーテンの隙間から顔を覗かせると、茶髪くんがビクリと体を揺らして後ずさった。
「先生なら、しばらく戻らないって言ってましたけど……」
「え……ああ、そうか……」
困ったように眉を寄せる茶髪くん。
私はベッドから降りると茶髪くんのもとへ歩み寄った。