プラス1℃の恋人

【12】動きだす予感

 あれからもうすぐ1年になる。
 入社してから4年目の初夏。

 青羽は千坂の係から外れ、新しい仕事を任されていた。
 セールスプロモーション部門が立ち上げられ、青羽がチーフに任命されたのだ。

 仁科が経営するケータリングサービス会社と提携して、イベントやパーティーで試飲サービスを行うのが、いまのところのおもな業務である。

 仁科が手掛けるイベントは外資企業向けのものが多く、日本の地ビールは大人気だ。

 商品PRをするための語学力が必須のため、それまで通販サイトの翻訳をしていた青羽にはうってつけの仕事だった。


 新入社員がひとり部下として配属され、周りがにぎやかになった。
 イベントをいくつかこなし、失敗もあったけれどそれ以上の達成感を得て、チームもようやくまとまってきた。

 けれど、まだまだやることは山積みだ。
 とくに夏から秋にかけてはビール業界はかき入れ時なので、アルバイトの手配や指導もあり、てんてこまいである。

 新人くんは、やる気はあるのだがイマイチ空回り気味で、少々手を焼いていた。
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