強制両想い彼氏
「あれ……永瀬くん?どうしたの?」
私が尋ねると、永瀬くんは少し困ったように「あー」と口ごもると、それから隣にきて一緒に歩き出した。
「もう遅いから、送る」
「え?いやいいよ。永瀬くんの家うちと反対方向でしょ?」
「よくねーよ。もう夜だし、お前に何かあったら俺が皐月に怒られる」
「……そ、そっか。じゃあお願いします」
そう言って2人で歩き出して数十歩。
それまで黙って歩いていた永瀬くんが口を開いた。
「やっぱり……くて……」
ボソボソと歯切れの悪い声。
何を言われたのかさっぱり聞こえなくて、わざと耳を近づけて首をひねった。
「ん?なに?何か言った?もっと大きい声で言ってくれなきゃ分からな……」
「っ……!だ、っから……!」
私の顔が近付いたことに驚いたのか、永瀬くんはバッと慌てて私から体を離すと、ふい、と目を逸らした。
「だから……俺は、皐月に怒られるのが嫌だからお前を送りたいんじゃ、なくて……。俺は、俺が送りたいから……皐月とか関係なく、お前のことが心配だから送りたい、って……言ったんだよ……」
そう言った永瀬くんの顔は真っ赤で。
嫌でもなんとなく分かってしまった。
多分、永瀬くんは私のことが好き。
柄にもなく永瀬くんがあまりに顔を赤くして恥ずかしそうにしているから、私までドキドキして顔が熱くなる。
「ほら、帰るぞ」
何も言えずに立ちすくんでいる私の腕を優しく引っ張ると、永瀬くんは照れ臭そうに笑った。