強制両想い彼氏
そんなことを考えながら見ていたその時だった。
ゴールに向かって軽快に走る皐月くんの後ろを、永瀬くんがボールを奪おうと全力で追いかけていた。
そこまでは良かった。
でも、その永瀬くんに気付いた皐月くんが、走っていた足を緩めた。
まるで永瀬くんを挑発するようにフェイントをかけ始めて、永瀬くんは皐月くんからボールを奪おうとますます必死になっている。
ボールをめぐって攻防を繰り広げる2人の姿は、もつれ合って喧嘩しているようにさえ見えた。
そして次の瞬間、永瀬くんが倒れた。
乾いた校庭に、膝を抱えてうずくまるようにして横たわっている。
試合は一時中断されて、永瀬くんのもとに部員たちが一斉に集まっていく。
永瀬くんは膝から血を流しているようで、担架に乗せられ急いで運ばれていった。
その様子を、皐月くんは他の部員たちと見送っていたけど、私は、見てしまった。
皐月くんが、永瀬くんの脚を蹴った。
多分校庭からじゃ見えない。
この3階の教室だからはっきり見えた。
ボールを奪おうとして伸びた永瀬くんの脚を、皐月くんが踏み潰すように蹴った。