強制両想い彼氏


さっきまで真っ青だった空が、もうすっかり茜色に染まる。
白かった雲は綺麗なオレンジ色に焼けて、ゆったり空に広がっていた。
その綺麗な赤い空を、深い紫色の空がじわじわと侵食し始めている。


下校時間が迫っているこの時間は、ほとんどの部活が練習を終え帰宅していた。


「遅くなって悪い」


待ち合わせ場所に皐月くんが現れた。


部活後のジャージ姿。
暑いのか長袖のジャージを腰に巻いていて、半袖のTシャツからは長くてしなやかな腕がすらっと伸びていて綺麗。


「ううん、大丈夫」


私がそう答えると、皐月くんはきょろきょろ周りを見渡した。


「とりあえず2人きりでゆっくり話せる場所探さなきゃな……。校舎内は下校時間だから先生たち見回りに来るし……」


皐月くんはしばらく考えると、思い当たる場所があったのか、私について来るように言った。


連れてこられたのは、校庭の隅に設置されているサッカー部の部室だった。


「ここなら先生の見回りもないし、ゆっくり話せる。部員は全員帰ったから誰もこないしな。まあちょっと男臭いかもしれねーけど我慢して」


始めて脚を踏み入れたサッカー部の部室は、意外にもきちんと整理されていた。
個々のロッカーがあって、筋トレ用のマットと長椅子が置いてあって、空いてるスペースにはサッカー用品が綺麗に並べられていた。
大きな窓がひとつあったけど、壁がコンクリートだからあまり明るく感じない。


「部室、綺麗だね」

「顧問が整理しろってうるせーからさ」


皐月くんが長椅子に腰掛けたから、私もその隣に少しだけ距離をあけて座った。



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