強制両想い彼氏
どうしよう。
なんて言おう。
久しぶり?怪我大丈夫?もう動いて平気なの?
考えてからハッとする。
ああ、私話せないんだ。
皐月くん以外の男の子と話しちゃだめなんだ。
何も、言えない。
かつんかつんと松葉杖をつきながら、永瀬くんがこっちに近付いてくる。
どうしよう。
無視するのはさすがに感じ悪すぎるよね。
挨拶くらいならいい?
でも挨拶したら絶対会話始まるよね。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
机に座って硬直したまま、必死に頭を働かせたけど、何もいい案が浮かばない。
永瀬くんの松葉杖の音は、すぐ真後ろまで迫っている。
「……」
私の机の横に差し掛かった時、永瀬くんは黙って私を横目でチラッとだけ見ると、何も言わずにそのまま通り過ぎていった。
そして自分の席にガタンと座ると、すぐにクラスメイトたちが永瀬くんの周りに集まっていた。
何も……話しかけられなかった……。
絶対「お前なんで見舞いこなかったんだよこの薄情女ぁ!」とかつっかかってくると思ったのに……。
結局その日の午前中、永瀬くんは一切私に話しかけてこなかった。