強制両想い彼氏
永瀬くんが登校してきてから、数週間が経った。
毎日顔を合わせているのに、この数週間、私たちは一切会話をしていない。
こんなことは、知り合ってから初めてだった。
「あんたが永瀬と喋らないなんてなんか変な感じ。前まであんなに仲良かったのに。もはや永瀬の方が彼氏っぽかったじゃん?」 友人たちは、突然無視し合うようになった私達を見て、面白がって口々にそう言った。
私だって、本当は前みたいに話したい。
ムカつくしウザい時もいっぱいあるけど、いつもお腹の底から笑わせてくれて、私の学校生活には欠かせない存在だった。
恋愛感情とかそういうのはナシにして、私は永瀬くんが好き。
本当は、また一緒にいっぱい笑いたい。
そういえば、ひとつ不可解なことがある。
私が永瀬くんに話しかけないのは皐月くんに言われてるからだけど、永瀬くんが私に話しかけてかなくなったのは一体なんでなんだろう?
お見舞いに行かなかったこと、入院中に送ってくれたラインに返信しなかったこと、ラインをブロックしたこと、やっぱり怒ってるのかな……。
でも私の携帯を勝手に使って、私のラインの男の子たちを片っ端からブロックしたのは皐月くんなんだけど。
私はそんなことしたくなかったのに。
とか、そんなことを色々考えて、また自己嫌悪。
頭に浮かぶのは、怒りに染まった皐月くんの凶器のような瞳。
思い出しただけで背筋が凍る。
……だめだ。
もう永瀬くんのことは考えるのやめるって決めたのに。
「教室戻ろうかな」
私は開いていた参考書をぱたんと閉じた。
顔を上げて壁にかかっている時計を見たら、もう夕方の5時を過ぎている。
皐月くんの部活が終わるまで、暇潰しに図書室で勉強をしていた。
多分そろそろ部活も終わる時間だし、教室で待ってたほうがいい。
私は勉強もそこそこに切り上げて、教科書類とノートを抱えて図書室を出た。