強制両想い彼氏
「着いたよ」
皐月くんがそう言って足を止めたのは、駅前の裏路地を少し進んだところにあるオシャレなケーキ屋さんだった。
「お前ずっとここ来たいって言ってただろ」
赤と白の煉瓦造りの建物は、まるでおとぎ話にでてくる小さな洋館みたいで、お店の周りには色とりどりのお花が植え込まれている。
雑誌で見たその店は、写真で見るよりずっとずっと素敵だった。
でも中を覗くとすごい人混みで、すぐには入れなさそうだな、と思っていたら、皐月くんが私の手を引いて店の中に足を踏み込む。
「大丈夫、ちゃんと予約してあるから」
そう言いながら振り返った皐月くんと目が合って、胸がきゅうっと締め付けられる。
こんなに素敵な人が彼氏だなんて、私幸せすぎないかな……。
私たちが案内されたのは、店の奥にある人通りのない窓際の静かな席。
店内は賑わっているのに、私たちの席だけは静かで、まるでここだけ別の空間みたいだった。
大きな窓からはお庭が見えて、綺麗な花と木が、ゆったり風に揺れているのが見える。
きっとこれも皐月くんが予約してくれたんだろうな、と思うとまた胸が高鳴った。
しばらくして頼んだケーキが運ばれてきた。
カラフルで美味しそうなケーキが盛られたプレートには、“これからもよろしくね”って書かれた可愛いチョコレートが乗っていて、我慢できずに喜びの声を上げてしまった。
喜ぶ私を見て、皐月くんはまた満足そうに微笑んだ。