気付いた時には2人の君が・・・
約束事
約束事を作ろう。僕は学校からの帰り道にそんなことを思った。
僕はいつもと同じように校門で桜野さんが来るのを待つ。そして、彼女は校門に着き僕を見るなりこういうのだ。遅れてごめんね、と。そこで
「約束事を作ろう」
彼女の前でいきなり、なんの脈絡もなくこう切り出した。
「なんの話ですか」
「桜野さんっていつも僕が校門で待ってると、ごめんねって言うんだよ」
「はい」
「だからさ約束事を作ろうと思って」
「どういうことですか?」
「謝らないこと。桜野さんはなんでもすぐに謝っちゃうからさ、そんなに身をかがめて窮屈そうにしなくてもいいかなって。それにさ、その、もう恋人同士なんだし謝る必要ないかなって思って」
恋人って思った途端やけに恥ずかしくなってしまった。
「そ、そうですね。すみません」
彼女も同じように照れてたみたいだった。しかも、無意識なのかまた謝っていた。
「あ、また謝ってるよ」
「本当だ」
彼女の失敗を2人して笑いあう。普段あまり笑った顔を見せない彼女が笑っている。それがとても嬉しかった。
結局今日は約束事を1つしか作れなかった。だから、これから少しずつ増やしていくことにする。これが毎日が楽しくなることでもあり、彼女を助けることでもあると思ったから。
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