気付いた時には2人の君が・・・
昼休み
学校での昼休み。登校中にお昼を一緒に食べる約束をしてたので中庭へ向かった。ぽかぽかと暖かい陽気の中、ベンチにに腰掛け彼女の姿を待つ。
「春野くん、すみません。遅れました。」
「大丈夫、そんなに待ってないから」
そういって二人で一つのベンチに腰掛ける。周りには生徒の姿は見えない。基本みんな教室でわいわい騒ぎながら弁当を食べている。わざわざ外に出て食べるまでもないのだろう。
「今日、数学の授業があったんだけど全然わからなかったんだよね。桜野さんは授業どんな感じ?」
その場を取り付くようような会話を始める。どうしても会話の一言目がぎこちないような気がしてならない。普段はみんなどうしているのだろうか。ふと、思い返してみてもわからない。
「私は化学が苦手でなかなか授業に追いつけないんです」
「今度、一緒に勉強しようか。化学はなんとかわかるんだ。桜野さんは数学できる?」
「人並みには」
「じゃあ、ちょうどいいね。もうすぐテスト前だし」
「そうですね」
「「・・・」」
風が遊んでる姿が見える。葉っぱの鳴き声が聞こえる。柔らかい沈黙の空気が流れる。
話していない空間がどこか安らぎを与えてくれる。彼女もそう思ってくれているだろうか。
互いに顔を合わせず、進む時間は同じ道を辿っているだろうか。もう少し、もう少し距離を縮めたい。
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