偽りの先生、幾千の涙
授業が何時からかは知らねえけど、こんな所で人助けしている余裕があるのか?
それとも早くに着きすぎた?
「先生がインフルエンザになっちゃって、休講になっちゃったの。
だから大丈夫だよ。
気を遣わせてごめんね。」
なるほど…俺は考えを巡らせる。
これはチャンスかもしれない。
「そうなんだ。
…それなら今時間ある?」
俺は国木田花音ちゃんの大きな目を覗き込む。
微笑んで、目の高さを合わせて、目の奥まで射抜くように見れば、大抵の女の子は落ちるって兄さんから教えてもらった。
もっとも、顔の良さが成功率に大きな影響を与えるけれど。
国木田花音ちゃんはというと、俺の動作に動揺しているのか、半歩下がって目を泳がせる。
「時間があったらご飯でもどう?
その制服…水仙女子でしょ?
校則厳しそうだし、放課後もこんなところに来て勉強してるし、息抜きしてる?」
しかも、俺がちょっとたけ調べたところによると、君のお家はかなり厳しそうだね。
偶には男の子とご飯に行ってもバチは当たらないよ。
「時間…あるというか…でもえっと…貴方もお忙しいんじゃ…」
「俺?
俺は全然。
伊藤の忘れ物を届けにいくるぐらい暇だから。」
断りたいオーラは凄く出してるけど、断るのは苦手らしい。
凄く困っているが、空気なんて読んでやらねえよ。