偽りの先生、幾千の涙
冷める前に食べる事を促すと、俺の質問を忘れたのではないかと疑う程、料理に夢中になっていた。
「うん!
これ美味しい!
こんなに美味しいのに、この値段なの!?」
キラキラと目を輝かせている花音ちゃんは、無邪気にグラタンを食べ続けている。
「普通だって。
っつか花音ちゃん、普段はもっと美味しいもの食べてるんじゃねえの?」
「家のご飯は美味しいけど…ちょっと感じが違うかな。
家で食べているご飯も美味しいけど、これも好き。」
ここまで言ってもらえたら、ファミレスの店員も喜ぶだろう。
パクパクと食べている花音ちゃんにつられ、俺もハンバーグを口に運ぶ。
美味いけど、そんなに感動するものではないと思いながら、俺は花音ちゃんを観察していた。
花音ちゃんはあっという間に食べてしまい、満足そうに水を飲んでいた。
「ご馳走さまでした!
本当に美味しかった。
一緒に行こうって言ってくれてありがとう!」
「どういたしまして。
こんなに喜んでもらえて、俺も嬉しいよ。」
本来の目的を忘れてしまいそうな程、楽しい雰囲気に包まれていた。
父さんの復讐に関係のない子だったなら、連絡先を聞いて、これからも普通に遊びたいと思う。
兄さんが榎本果穂に近付いたおかげで逢えたんだけど、なんだか勿体ない。
父さんも兄さんも、何でそんなに復讐したがるのだろう。
許せない気持ちは分からなくもないけど、もっと他の方法ねえかな。
あと…復讐し終わったら、前みたいな生活に戻れるだろうか。
もし戻れるなら、とっとと復讐なんか終わりにしたい。