偽りの先生、幾千の涙
俺と同じ、嘘吐きの笑い方だ。
この程度の秘密じゃ、この子には敵わないかな。
「休みの前にごめんね。
早くやっておいた方がいいと思って。」
「早い方がいいと私も思いますよ。
伊藤先生こそ、お休みの前ですが熱心ですね。」
「熱心なんかじゃないよ。
何事も早くやりたいだけ。」
今だって、本題に入りたくてウズウズしている。
俺は表向きの情報が入ったファイルを開く。
「早速だけど、榎本さんは進路で困ってる事とか…なさそうだね。
どの教科も完璧かな?」
「そんな事ないですよ。
まだ4月てすよ、不安だらけです。」
「本当に?
こんなによく出来るんだから、何処の大学も心配ないよ。
それより…日本の大学ばかり志望しているけど、海外の大学とか興味ないの?」
「…ないわけじゃないですけど、あまり想像が出来ないと言いますか…特には考えていないです。」
刹那、榎本果穂の表情が曇った。
ここを掘り下げていけば、何かが分かるかもしれない。
「それは勿体ない。
…準備するなら今が最後だよ?
お父様もアメリカに住んでおられるし、良い選択肢だと思うよ?」
榎本果穂の目の奥が濁った。
父親と仲が悪いのか?