偽りの先生、幾千の涙


「そこまで仰って下さるなんて…ありがとうございます。
でもやっぱり私は日本で勉強したいです。
海外で学ぶなら、留学という選択肢もあります。
せっかくのご提案、無下にして申し訳ないです。」


父親については一切触れずに、榎本果穂は断った。


「そっか、それなら日本で受験する方向のまま、という事でいいね。
あとは、何か相談しておきたい事ある?」


「そうですね…
相談と言いますか、質問なんですけれど、伊藤先生は高校3年生の時は毎日どれぐらい勉強していましたか?」


「俺?
俺はね…わりとずっと勉強してたタイプ?
だから…全然役に立てないけど、どれぐらいかは分からないな。」


その頃は大学受験以外の危ない勉強ばっかりしていたけどな。


でもそれも勉強といえば勉強だ。


「そうですか…不安だったからずっと勉強していた、という事ですか?」


「不安と言うよりは、課題がひたすら多かったから自然と勉強していた感じだな。
課題が終わらない不安を抱えて生きてたよ。」


そうそう、爆弾とか薬品とか、文系志望なのに全然関係のない事ばかり勉強していたな。


父さんがそんな事ばかり教えるし、高校生の俺には難しかて、苦労したよ。


そういえば、海斗も今やらされているのか?


あいつが勉強しているところなんて見た事ないが。


「それは大変だったんですね。
…私、心配症なところがありまして、勉強していないと不安なんです。
してても不安なんですけどね。」


もっともらしい事を言っているが、これも嘘っぽい。


不安?何がだ?全国模試の結果とか、こっちは把握してるんだぞ。


それに榎本果穂の授業態度を見ていると、授業中に全部覚えるタイプだ。


< 48 / 294 >

この作品をシェア

pagetop