偽りの先生、幾千の涙
よくやって理系は問題集、古文も英語も単語は全部頭に入っている、そうだろ?
「榎本さんぐらいよく出来る子でも不安になるんだ。
でもそれくらいの方がコンスタントに勉強するし、不安で勉強するからこそ優秀なのかな。」
当たり障りのない会話が繰り返される。
この会話に意味がないのは、榎本果穂だって分かっているはずだ。
止めない理由は…心を落ち着かせているから。
父親の名前を出されたのがよっぽど嫌だったのだろう。
そのストレスを軽減するために、頭を休ませている。
そう考えると、俺にとっては面白くない。
寧ろもっとボロを出してもらいたいのに、こんな茶番に付き合っていられない。
それにこの茶番に飽きてきた、そろそろ話そう。
「榎本さん、答えたくなかったら答えなくていいから。
でも嘘は吐かないでほしい。」
俺がそう言うと、空気が止まった。
榎本果穂も俺も数秒間全く動かなかった。
「何でしょうか?」
人形のように美しい笑みを浮かべて、聞き返してくる。
今度は間を空けなかった。
「榎本さん、どうして死のうとしたの?」
俺は賭けに出た。
俺が知りたい事と関係があるかもしれない。
関係なかったら、生徒と先生のただの会話に終わる。
長くなるのを覚悟で俺は聞いたんだ。