強引年下ピアニストと恋するカクテル。
客層は、いつも通り見目麗しく上品な方々ばかりなんだけど、未だに現れないピアニストを待ちわびているのか、ちらちらとグランドピアノの方へ視線を送っている。
BARの真ん中に置かれたグランドピアノも、今日は誇らしげに光っている。
(もう少し早くくれば良かった。座る場所あるかな?)
颯太くんが経営しているこのBARは私には居心地が悪い。
今日は開店3周年記念日も重なっているらしく、前々から颯太くんから来て欲しいと打診はあったんだよね。
でも私はまだまだ新米のピアノ教室の指導員。
昔、自分がお世話になていたピアだ。
そんな日々の中、颯太くんの高級なBARで毎日大好きなカクテルを飲みに来れるほど私の収入は高くない。
身の丈にあっていないBARに通える度胸もない。
それに同級生だった王子様が義兄になるなんてちょっと複雑だし。
一応、挙式後は頑張って『お兄さん』と呼ぶよう気持ちは切り替えたい。
けど気は重たかった。
「きゃー。見て!ピアニストの蒼村怜也だよ!」