強引同期に愛されまして。

どれだけ正論でたしなめても、少しも動じたりしない。
お調子者で、口ばかりが達者。それでも人からはあまり嫌われない不思議な男。

いや、嫌われないは嘘かな。
迷惑ばっかりかけられてるし、言うことはムカつくし、嫌っている人間は多いかもしれない。

嫌いになりきれない自分が、むしろ不思議でならない。



「おっかしいよな、俺って結構いい男だと思うんだけど」

「自分で言ってるようだからダメなのよ」

「お前、ホントに駄目だしばっかりするな!」

「他の人は遠慮して言えないだけで、皆思ってるはずだわ」


ポンポンと言い返す関係もかれこれ七年。
思えば新人研修時代から、思いあがる彼を上からたたきつぶすのは私の役目だったような気がする。


「三浦は自分の意見を他人もそうだと思い込むところが悪いところだなぁ」

呆れたように言われてカチンときた。

ふざけんなよ、その言葉、そっくりお返しする。


「あんたは人の話を聞かないところが駄目よ」

「失礼だなお前は」


通じているのかいないのか。
私に何度怒られても、田中くんは平気そうだ。

叱っても効果ないなんてムカつくな。もう、話したくないからあっちに行ってほしい。


やがて聞こえてくる鼻歌。見ればご機嫌な様子で外のウェディングベルを見つめている。
反省という言葉を知っているか、と聞きたくなるくらいこの男は立ち直りが早い。

でも、この横顔が、私は好きなのかもしれない。
感じたくもないのに胸がきゅっとなって、自分の趣味の悪さに泣きたくなる。

私は仕事に自信があるし、見た目だっていいとは言わないが悪くもない。
自立した社会人としてそこそこ全うに生きているはずだ。

なのになんで、こんな男を好きにならなきゃならないのだ。


< 3 / 100 >

この作品をシェア

pagetop