強引同期に愛されまして。


 準備だなんだにてこずったので、田中くんのマンションにたどり着いたのは二十三時ごろだった。すぐ近くにある駐車場に車を停め、彼がスーツケースを引きずり、私が旅行カバンを担いで歩く。


「つか、なんで今日来なきゃダメだったの? うちに泊ってもよかったじゃない」

「だって車できちゃったしな。俺スーツ持ってきてないし」

「どうしてそう判断が甘いのよ」

「うるせぇな。テンパってたんだよ」


私があくびをひとつすると、田中くんは私が持っていた鞄もぶんどった。


「部屋行ったらとっとと風呂入って寝ろよ」

「うん。そういえばベッドってひとつだよね」

「そうだけど。毎日ヤるほどがっついてねぇよ」


そういう言葉には恥じらわないのね。
昨日振りの五階の部屋。荷物を持ってもらって手ぶらなので、鍵は私があけた。


「先に風呂いけよ」

「うん」


私は先にシャワーを借り、明日着る予定の服をスーツケースの中から出して、布団に入った。
ドキドキして眠れるもんかと思ったけれど、疲れていたのか、彼がシャワーから出てくる前に眠りに落ちてしまった。


夢も見ない、深い眠りだった。
なのに、肌に何かが触れ、眠りの沼から引っ張り出される。

うっすら目を開ければ、田中くんが私を上から見下ろしていた。


「え? 何? 何時」

「朝。もうすぐ四時」

「早くない?」

「うん」


何度も頷きながら、彼の唇は私の体を伝っていく。
寝ぼけているのか? こんなことされたら、こっちだって動揺するんですけど。

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