強引同期に愛されまして。
「そうよ。酔っぱらったふりしてお持ち帰りされようと企んだ子とかもいたらしいけどね、上手にはぐらかされてタクシー乗せられたって聞いたことあるわよ?」
同期の女子内では、ひそかに『鉄の微笑』というあだ名をつけられている。
いつも笑顔を絶やさず、怒っているときも笑顔で対処するあの男は、話していれば軽い?とか思わせるくらい社交的なくせに、男女関係においてはやたらにガードは鉄壁で、彼に憧れていた女の子たちもいつしか「脈ありそうにないですー」と諦めていった。
「ああ。……私の時は永屋さんのほうがつぶれちゃったので」
なにそれ。
あの隙の無い男が、酒に酔ってつぶれるって?
「本当?」
「実は弱いんですって。普段は飲んだふりしてああです」
和賀さんが指さした方向では、永屋くんが楽しそうに場を盛り上げつつ、こっそり田中くんのグラスに自分の中身をつぎたしていた。
「あとはウーロン茶を頼んで、ひそかに割ったりしてるらしいです。まずそうですよね、ビールウーロン茶って」
「へぇ、そうなんだ」
意外。そんな面白いことする人だったんだ。
「ちょっと可愛いですよね」
和賀さんが、思い出したら自然に笑ってしまったって感じで微笑む。
思わず見入ってしまうほど、その顔は愛らしい。和賀さんはいわゆるツンツン女子だなーと思っていたのだけど、その印象をここまで変えるなんて、恋愛ってすごいなぁ。