強引同期に愛されまして。

「わかった。後でするわよ。それより、今日は私、自分ちに帰るから」

『は? なんでだよ。迎えに行くからうちにこいよ』

「癖で自分のアパートに帰ってきちゃったのよ。今更面倒くさいし」

『は?』


電話口の彼の声が私に負けないくらい尖った。
言い方が悪かったなとは、言った瞬間から思ったけれど、今更こっちだって引き下がれない。


「とにかく、和賀さんには電話しておくから。じゃあね」

『ちょっと待てよ、葉菜。おい、は……』


電話を切ったのは私の方だ。

これ以上話したら喧嘩にしかならないもん。
とはいえ、心もささくれ立ってしまった今、ひとりになったところで気が休まるはずもない。
なにかに八つ当たりしたい気分で、地面を蹴る。


「きゃっ」


そうしたら側溝の穴にかかとが引っかかって、はがれてしまった。
履きやすくて気に入っているパンプスなのに、ついてないにもほどがある。

仕方なく、つま先だけで歩いてみるけど、これがまた結構疲れる。
普段と違う歩き方ってだけで、疲労感は倍に感じられた。

歩いては休んでを繰り返しながら、私はまた携帯とにらめっこしていた。

「和賀さんに電話……も気まずいな」

今のぐちゃぐちゃな気持ちで電話しても、いいことなんてなにもない気がする。
私だって後輩には格好付けていたいのよ。
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