強引同期に愛されまして。
そう思って尻込みしているうちに、着信音が鳴った。今日は忙しいなと思いつつ、相手が永屋くんだったから気楽に出てしまった。
「もしもし?」
『ああ三浦、お疲れ。俺、永屋だけど。今大丈夫か?』
「大丈夫よ。なに?」
仕事の話なら、終業後までわざわざ電話してこないだろうし、和賀さんのことかな。
『つかぬことを聞くけどさ。お前今、田中とどうなってんの』
うわあ、切り込んできてほしくないところに直球で来たな。
「どうって別に」
『だって今、お前の名前呼びながら走っていったぜ?』
「えっ」
そういえばまだ会社だって言ってたな。何してくれんのよ、変な噂が立つじゃないの。
私が黙っていると、永屋くんは確認するようにゆっくりと続けた。
『……名前で呼ぶような付き合いなんだ?』
「う……」
いきなりバレた。いや別に隠してたわけじゃないけど。
でも私もよくわからないんだもん。田中くんのあの言動は果たして本気なのか。私とちゃんと付き合おうとしているのかいまいち信じきれない。
『まあ、ふたりのことに口挟む気はないんだけど。付き合ってるならまずいことを言ったって、香澄がへこんでいるから、話きいてやって』
「え、ちょっと」
そんないきなり困ります。
と心の中で叫んでも、時が止まるわけじゃない。ガサガサと物音がしたと思ったら、気まずそうな和賀さんの声がした。