強引同期に愛されまして。
「そりゃ、脈ないって思ってたし、他に行こうと頑張ってたんだよ。俺にとってお前は、好きだけど絶対手に入るはずのない女だったんだよ。実際、お前にはさっきの……彼氏ができたし。別れてからだって俺には泣きついたりしなかったし。……まあ、ずっと同僚でいいって思ってたんだ。振られるくらいなら、このまんまでいいって」
照れくさそうにそっぽを向いて、「でも」と続けた時、電車が駅に止まったので立ち上がる。
自然に手を引かれて、一緒にホームに下り立つ。冷たい夜の風が首元を冷やしていく。
「でも、思いがけないことが起こった。山海の結婚式の夜、いつもは少しの隙も見せないお前が酔いつぶれただろ。気が付いたら、俺が送っていくって口走ってた」
裸で目覚めた日を思い出して、頭に血が上って急に寒さを感じなくなる。
「じゃああの夜、やっぱりしたの?」
「してない。……できなかった。意識ないのにそんなことしたら、お前はもう二度と俺を許さないだろうなって思って」
手に力が籠められる。彼は立ち止まると、少し顔を上気させたまま、熱のこもった目で私を見つめる。
「だからその後の棚ぼた展開は、俺にとっては奇跡のようなもんだったわけ」
勢いで、やっちゃったよね。思えばあの時は、何かに背中を押されたように、お互いに少し大胆だった。
こういうの、神の采配だったりするのかな。