強引同期に愛されまして。
「じゃ、じゃあ私、仕事に戻るから」
慌てて背中を向けて歩き出すと、「照れてる? かわいいとこあるじゃん、三浦」という永屋くんの声。
て、照れてなんてないわよ。
ただどうしたらいいか分からなくなっただけで!
内心で反論していたら、「葉菜はずっとかわいいぞ」なんてしれっと、田中くんが言うから。
私の頭の中がどんどん沸騰していく。
いないところで褒めるとかやめてよ。嬉しすぎておかしくなっちゃうじゃないか。
これから仕事だってのに、全く全く全く!
頭を冷やすために、エレベータではなく階段を使って一階下の自分の部署へと向かう。
彼氏が一緒の会社というのはやっぱり心臓に悪いかもしれない。
しかもあっちが人目を気にしなさそうだから余計困る。
初音のところみたいに、結婚してもプライベートとは切り分けて、仕事と家庭を両立できるようにしなきゃいけないのに!
階段の踊り場に立って深呼吸をする。
そうだな。
とりあえず、部内に戻ったら和賀さんをほめたたえてみようか。
そして、結婚しても仕事を続ける意義をとうとうと説明しておこう。
ちゃんと協力するから、一緒に頑張ろうよって。
ひとりで抱え込むから、大変なんだ。協力し合えば助け合える。
もう他人ごとじゃないんだもの。それは切実にそう思う。
だから、自分のためにも、ひそかに兼業主婦同盟でも立ち上げてみようかな、なんてね。
【Fin.】