強引同期に愛されまして。

 田中くんのマンションで一緒に暮らすようになって二週間。
コーヒーを淹れる以外の家事能力が不足している彼との生活には小さな言い合いが絶えないけれど、むしろ今私はそれを楽しんでいる。

だってさ、洗濯物のしわも伸ばさない、みそ汁のだしの取り方も知らない。
それで今まで一体どうやって生活してたのか気になるじゃない?


『ワイシャツや、上着はクリーニングに出すし、掃除は定期的にハウスクリーニングがくる。食事は外食か弁当。……男のひとり暮らしなんてそんなもんだろ?』


試しに聞いてみたら、いかにもバブリーな返答だった。

いやいや、違うわよ。
一般庶民の男はちゃんと自分で掃除もするし、ご飯も作ります。

しかも、家事をしない割に、道具がそろっているのがとても不思議だ。
フライパンは大小に加えて、卵焼き用の四角い形のものまであるし、鍋も大中小と三つもある。
いらないでしょ、こんなに、って思ってしまうのは、私だけじゃ無いはずだ。

私と暮らすのなら、ちゃんとできるようになってもらわないと困ります、と説き伏せて、週末は一緒にご飯を作ったり洗濯したりする。

あんまりガミガミ言うと不貞腐れるけど、結局最後は手伝うところとか可愛いし。

『すげーな』なんて素直に褒められると嬉しくなったりと、まともなデートじゃないのに案外楽しい。


< 89 / 100 >

この作品をシェア

pagetop