鎖骨を噛む
色を塗り終えた頃、仲介人の金子と、運び屋の屈強な男二人が到着した。金子は見届け人で、運び屋はりさの遺体を処理する仕事がある。
「相変わらず、気持ちの悪い絵を描きますね……。」
金子がオレの後ろから絵を覗き込んできた。金子は高校生で、依頼人と殺し屋との仲介をする、仲介屋をやっている。以前は殺し屋だったらしいが、ある一件で派手に目立ってしまい、以降は殺しからは足を洗い、高校に通いながら仲介人としての仕事をしているらしい。
「どうして自分が殺した奴の絵なんて描いてるんです?」
「そこに山があれば登るのが登山家だろ? オレは芸術家だ。そこに芸術があるなら、表現し、追い求める。」
「ふーん。」金子は後ろ手で退屈そうに欠伸をした。
「まあどうでもいいですけど、ムルソーさん。あなたは芸術には向いてないですよ。いっそ、殺し一本でやってみたらどうです?」
「殺しなんかで一生を終えたくねえよ。」
「それもそうですね。」金子が笑った。
「でも、どうして血の色を赤じゃなくて、黒で描くんですか?」
オレはチラッと金子の方を振り向いた。
「……黒く見えるから。」