鎖骨を噛む





「以上、こんな感じ……です。はい。」



はい。史上最強にダサい自己を紹介できてない自己紹介だった気がする。



「もしよかったら、えっと……ムルソーさんのこともできる限りでいいので、教えてください。企業秘密の場合は、全然大丈夫です。私、強いんで。」



何が大丈夫なんだろう? 何が強いんだろう? メイクはばっちりなのに、心のメッキはどんどん剥げていく。



「あと、質問コーナー! です、はい!」



突然の!?



「ムルソーさんに訊きたいことがあって、それは、どうしてムルソーなんて名前を付けたんですか?」



その答えは、きっと「本名を知られたくないから。」で済まされるんだろうなあ。でも、そういうことじゃなくて、私は、どうして、「名無し」とか「K」とかいろいろ付けられそうな名前の中から、「ムルソー」なんて、聞いたこともないような名前を付けたのか。そこが気になるの。



気になるのに、それを上手く説明できない。



「ムルソーさんだから、『ムルちゃん』とかそういう呼び方の方がいいですか?」



ホント私ってバカだな……死にたくなるくらいにバカ。




< 35 / 148 >

この作品をシェア

pagetop