毒舌王子に囚われました


手を引かれ抱き寄せられると、なにかが口の中に入ってくる。

……甘い。チョコレート味の、生クリーム。

「……行儀、悪いですよ」

入ってきたのは、秋瀬さんの、指だ。

生クリームを舐めているのか。はたまた、秋瀬さんの指を舐めているのか。

わけがわからなくなってくる。

「知るかそんなの」

「まったく――」

話してる途中で、秋瀬さんが、わたしの口を塞いだ。

「……甘いな」

これまでで一番、甘いキス。

「甘い、ですね」

「おかわりは?」

「…………」



……下さい。



「誕生日、おめでとう」

「……嬉しすぎて、とけそうです」

「だったら、溶けようか。一緒に」



なんで、『なら、溶けてみろ』って意地悪いわないんですか。

甘すぎます、秋瀬さん。

誕生日だから……?


「あ、あれ。ケーキ……」

ひょいと抱えられる。向かうは、おそらく寝室だ。

「あんなの、前菜だろ。一口食えばいい」

「メインディッシュは……?」

「お前」

いやいや、わたしの誕生日ですよ秋瀬さんっ!?

「可愛がってやるよ」

「…………」



……ねぇ、秋瀬さん。

あとで、絶対、一緒に食べましょうね。

秋瀬さん手作りの、すごくすごく可愛い、誕生日ケーキ。




Fin.


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