毒舌王子に囚われました


秋瀬さんが、薄笑いしてわたしを見る。ロウソクのあかりで照らされての薄笑いなので、軽くホラーだ。

「あ、秋瀬さん。あれやりましょう。ロウソク、ふーって」

はやくしなきゃ、ロウがケーキにたれちゃう。そうなると、秋瀬さんは、『こんな人工物が付着したもの俺が食うか』とか言いだしかねないし。

「……まぁいい。誕生日だしな」

た、助かった。おかしな妄想は、墓場までもっていかせて下さい。

真っ暗な室内で、ただ、ケーキの上のロウソクの灯りだけが辺りを照らしている。

「綺麗……」

何年ぶりだろう。こんな風に、誕生日を祝ってもらえたのは。

「ほら、ふけよ」

「は、はい」

ここは、バースデーソングを歌ってもらう場面じゃないのかな。絶対お願いしても歌ってくれるとは思えないから、口には出さないけれども。

すぅっと息を吸いこんだ、そのとき。

一足先に、秋瀬さんがロウソクの火を吹き消した。

「ちょ、ちょっと……!!」

意地悪すぎやしませんか、秋瀬さん。

「なんだよ」

「一番美味しいとこ、持ってかないで下さいよ!?」

やられた。

室内が、真っ暗になる。

「それは違うんじゃないか?」

「……と、いいますと?」

なにが違うの? 違わないですよ。

醍醐味じゃないですか。ふーってやるのは。

「一番美味いのは――お前だろ」

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