毒舌王子に囚われました
わたしからグラスを奪い取ると、それを強引に飲ませてくる。
「んん……」自分の意志とは関係なく、グラスからお酒が流れ込んでくる。残り3分の2の量を全て飲み干しそうな勢いで。
ちょっとちょっと、秋瀬さん。こんなに一気飲みしたら、危なくないですか。
「お前、酒かどうかも判断できないんだな」
え?
「今のは――ただの紅茶だ」
「えっ……ええ!?」
「なんでそんなバカなんだよ」
「……う、嘘だったんですか。レディーキラーとかなんとか」
「いいや」氷だけになったグラスをテーブルに置くと、ひょいとわたしの身体を持ち上げ膝の上に乗せる。
囚われてしまった。
最強に毒舌な王子様に。
「ロングアイランドアイスティー」
「ろんぐ……??」
「その名の通り、見た目も味も紅茶みたいな、そんなカクテル」
「へぇ……そんなものがあるんですねぇ」
「もっと警戒しろよ」
秋瀬さんのいう通りだ。自分の身は、自分で守れるようにならなきゃ。
……でも。今は、秋瀬さんと2人。
「とても今更なのですが。秋瀬さんとじゃ、特訓できないかもって……思えてきました」
「なんだと?」
「秋瀬さん相手じゃ、油断、しちゃいます。なんだかんだ優しいから、本気でつぶしにかからないですし。もし潰れても、ここは秋瀬さんの家で、秋瀬さんが隣にいて安心しちゃうというか。ダメですね、わたし……」
「あぁ、ダメダメだな」