毒舌王子に囚われました


わたしからグラスを奪い取ると、それを強引に飲ませてくる。

「んん……」自分の意志とは関係なく、グラスからお酒が流れ込んでくる。残り3分の2の量を全て飲み干しそうな勢いで。

ちょっとちょっと、秋瀬さん。こんなに一気飲みしたら、危なくないですか。

「お前、酒かどうかも判断できないんだな」

え?

「今のは――ただの紅茶だ」

「えっ……ええ!?」

「なんでそんなバカなんだよ」

「……う、嘘だったんですか。レディーキラーとかなんとか」

「いいや」氷だけになったグラスをテーブルに置くと、ひょいとわたしの身体を持ち上げ膝の上に乗せる。

囚われてしまった。

最強に毒舌な王子様に。

「ロングアイランドアイスティー」

「ろんぐ……??」

「その名の通り、見た目も味も紅茶みたいな、そんなカクテル」

「へぇ……そんなものがあるんですねぇ」

「もっと警戒しろよ」

秋瀬さんのいう通りだ。自分の身は、自分で守れるようにならなきゃ。

……でも。今は、秋瀬さんと2人。

「とても今更なのですが。秋瀬さんとじゃ、特訓できないかもって……思えてきました」

「なんだと?」

「秋瀬さん相手じゃ、油断、しちゃいます。なんだかんだ優しいから、本気でつぶしにかからないですし。もし潰れても、ここは秋瀬さんの家で、秋瀬さんが隣にいて安心しちゃうというか。ダメですね、わたし……」

「あぁ、ダメダメだな」


< 114 / 128 >

この作品をシェア

pagetop