毒舌王子に囚われました
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……とまぁ、そんなことがありまして。
一縷さんは一縷さんなりに、大きく変わってきてくれているのです。
ちなみに、秋瀬さんのことを一縷さんと呼ぶのは、まだ慣れていない。
でも、もう、わたしは秋瀬さんになったから、下の名前で呼ぶべきだなぁと……
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「おい、自分の汚したとこぐらい掃除できねぇのか」
……え?
「なにボケっとしてる?」
えーっと。
ここは、うちのリビングで。わたしは、ソファで……寝ていた?
「土生稚沙都」
……あれ? 結婚は? あれ??
「わたしは、秋瀬稚沙都じゃ……」
「なにを寝ぼけてんだよ」
あきれ顔でそういう一縷さんは、いつも手の届く場所に常備している除菌シートでささっとテーブルをふいている。
「……あぁ、そっか。夢か」
実家への挨拶は、いってくれた。あの話は、事実だ。
でも、わたし達はまだ、夫婦ではない。
「着替えろよ」
「え?」
「出しに行くぞ」
「……出しに行く?」
「婚姻届」