毒舌王子に囚われました


「秋瀬さん、お風呂、ありがとうございました」


お風呂からあがったわたしは、まっすぐリビングへと向かった。

もちろん、バスタオル1枚で――なんてことはなく。

新しく用意してもらった上下グレーのスウェットに、やっと眼鏡をかけ。

視界が鮮明になったところで、長い髪をタオルでぬぐいながらやってきた。


……返事がない。無視だ。

というか、ソファに横たわって10インチくらいのタブレットをいじっている秋瀬さん。

忙しいのかな? それとも、単純に返事するのが面倒でスルーされたのだろうか。


スウェットの中には下着を身につけていないので、スースーする。

秋瀬さん。なにも、下着まで洗ってくれることないのに。


「ガキみたい」

「へ?」

「下着の趣味。いや、ガキの方がセンスいいかもな?」

「……!!」

「せめて上下合わせろっつーの」

「いつもは、上下セットなんです。今日は、たまたまそうなっただけです!!」

「へぇ。たまたま……ねぇ」

「ほんとなんです!」

「そういうことにしてやってもいいけど」


あのですねぇ。それ、完全にセクハラ発言というやつじゃないでしょうか。


「もう……放っておいて下さいよ、下着くらい」

「お前、誰に向かって口きいてんの?」


えっ……と、

「秋瀬さんですよ?」

「俺はお前の恩人だろう」

「あ、そ、そうです……ね?」

「なんで疑問系なんだよ」

「そ、そうです。困っているわたしを助けてくれた恩人です!」

「……よくいうよ。覚えてねーくせに」

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