毒舌王子に囚われました
その通りだ。わたしは、飲み会の途中から、記憶がない。
だから、なぜわたしを秋瀬さんが連れて帰ってきてくれたのかが不明なままだ。
だって、おかしいよね。
秋瀬さんは、昨日の飲み会に――、参加していなかったんだから。
どこで会ったの?
秋瀬さんとわたし……。
眼鏡のおかげで、前がよく見える。それはもう、秋瀬さんの眉間の皺まで。
秋瀬さーん。そんなにカリカリしてちゃ、身体によくないですよ。せっかくの男前が、台無しですよ?
と、口に出したら即座に地獄行きになりそうな台詞を心の中でつぶやく。
にしても、本当に広くて綺麗な部屋だなぁ。
モデルルームみたい。机の上には物がないし、観葉植物だって手入れが行き届いているし。
「汚い女だな」
「……はい?」
「お前、清潔感なさすぎなんだよ」
そんなはずない。ちゃんと、全身磨いてきた。
くんくんと腕の匂いを嗅ぐと、自分の家とは違うボディーソープの香りがする。
髪だっていつもより丁寧に……
「眼鏡」
「め、眼鏡、ですか……?」
「ああ。指紋だらけだった」