毒舌王子に囚われました
――今日1日、俺と過ごせ。
突拍子もないことをいわれ、
「そんなの、無理です」当然お断りする。
悪魔モードの秋瀬さんと一緒に休日を過ごすなんて、考えただけで恐ろしいからだ。
なにをされるか、わかったもんじゃない。
「帰るというなら、俺を納得させるだけの理由を述べろ」
理由……!?
「〝帰りたいから〟じゃ、ダメなんですか?」
「ダメだ」
即答ですかっ。
「ど、どうしてですかっ」
「だってお前、帰りたいなんて思ってないよな?」
「え……」
いやいや。
帰りたいです……よ?
「本当は、俺とまだ一緒にいたいんだろ。心のどこかで、俺に引き止めてもらえることを期待してるんだろ?」
ドクンと胸が、大きく鼓動する。
ちょ、ちょっと待って。嘘……でしょ?
どうしてここでドキンとするのわたし。
はやく荷物をまとめて……そうだ、帰り際に本屋に寄って、楽しみにしていた小説を買って帰って読もう。そうしよう。
「勝手に、変な解釈しないで下さい」
「素直に言えよ。『相手して下さい、秋瀬一縷さん』って」
「い、言いませんっ……!」
「帰るなら帰ればいい。下着は返してやらねーが」
「……!? そんなの、卑怯ですっ」
「嬉しいくせに」
「うれ、しく、なんか……」
かみすぎにも程がある。最悪だ。
「説得力なさすぎ」
あぁ……また、そんな笑顔で笑う。
優しい笑顔。