毒舌王子に囚われました


カーテンまでゆっくり歩いていき、ほんの少し開けて部屋の明かりを確保する。

そうだ、今のうちに下着を返してもらおう。

悪いけど、勝手に探させてもらいますよ……?

それから、まず向かったのは、わたしが目覚めた部屋。

……つまり、寝室だ。


扉を開けて中に入ると、つい数時間前に目覚めたベッドがあった。

今度は眼鏡をかけているので、部屋の隅々まで見える。

薄手の毛布を手に取ったわたしは、一旦リビングのソファで眠る秋瀬さんの元へ行くと、それを秋瀬さんにかけた。

……綺麗な寝顔。

この顔だけ見ていたら、『眼球腐ってるんじゃねぇの』なんてとても言いそうにないのに。

寝室に戻ると、あるものに気がつく。

「……あれ?」

それに近づき、まじまじと見る。

「これ、わたしのスーツ」

意識を失う前に着ていた物が、ハンガーにかけてあるではないか。

スーツ一式。カッターシャツだってある。

なんで? どうして?

汚れて捨てられたんじゃないの……?

もしかして……え、洗ってくれたの?

あの秋瀬さんが、汚物のついたスーツを!?


【捨てた】


そう……言ったくせに。

なんで嘘なんてつくかな。

ちゃんと、洗って乾かしてくれていたんじゃないですか。

< 43 / 128 >

この作品をシェア

pagetop