毒舌王子に囚われました


秋瀬さんにキスされた途端、全身から力が抜ける。

身を委ねるって、こういうとだと思う。

スウェットの上から胸を撫でられ、
「後悔しない?」と囁きかけてくる秋瀬さんに

「このまま、離れちゃう方が……後悔すると思うので」

そう返事するのが、やっとだった。


「……どんなけ俺にゾッコンなの」

笑いながらわたしの眼鏡を奪い取る。

どうしよう。

今は、そんな意地悪な笑顔でさえときめいてしまう。


後悔しませんよ、絶対。


わたしは秋瀬さんとこうしていると、幸せだから。

秋瀬さんの、嬉しそうな顔を見るのが好きだから。


ねぇ、秋瀬さん。

わたしは、秋瀬さんの恋人になれなくてもいいです。

秋瀬さんが注文の多いご主人様だろうと……この際、目をつむりましょう。

それでも一緒にいたいと思えるので。


だから、秋瀬さん。

わたしも、秋瀬さんに……幸せをわけてあげたいです。

わたしといることで、喜んでもらいたいです。


その傷ついた心が、いつか癒える日が来て欲しいなと……

心から、そう思います。

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