毒舌王子に囚われました
――週明けの月曜日。
わたしは、いつも通り出社しオフィスの片隅で仕事をこなしていた。
「土生ちゃん。領収書、よろしく~」
出た。やってきたのは、飯野先輩。
ショートカットにバッチリ化粧をキメた人。
金曜日の歓迎会で1番わたしにお酒をぐいぐいすすめてきたのは、何を隠そう飯野先輩だ。
「……かしこまりました」
領収書の入った封筒を受け取る。
「あっれぇ? 元気ない?」
そういう先輩は、相変わらずめちゃくちゃ元気ですね。
「そんなことは……」
「まだお酒残ってんの?」
いや、さすがにそれはないです。
「ちょっと、身体が、だるいというか」
「生理?」
「いえ、なんでもないです」
言えるわけないよ。
この週末――秋瀬一縷に抱かれすぎて、身体が悲鳴をあげているだなんて。
なんなの、あの人。
そりゃ、わたしは、彼に身を委ねた。
だからって、あんなに何度も……することないのに。
初めてだったのに……。
「土生ちゃん……ほんとに大丈夫?」
「あ、だ、大丈夫……です!」
ダメダメ。秋瀬さんとのことは、考えないようにしなきゃ。
でないと、なにも手につかなくなりそうだから……。
意味もなく、眼鏡の位置を直す。
「そうだ、土生ちゃん」
飯野先輩の声が、急にヒソヒソ話でもするようなボリュームに落ちた。
「あれから、無事帰れた?」
「……あ、あれから?」