毒舌王子に囚われました
「とぼけないでよ。まさか、お持ち帰りなんて……されてないよねぇ?」
――!?
「おんなじ方面だっていうから、酔いつぶれた土生ちゃんのこと任せたけどね。ほんというと、ちょーっと、心配してたんだよね」
「心配……ですか?」
「信頼してるとはいえ、所詮は男でしょ。2人きりにしてよかったのかなって」
飯野先輩が秋瀬さんにわたしを託したの?
「お持ち帰りなんて、されてないです」
咄嗟に嘘をついた。
これ以上秋瀬さんとのことを追求されたくないからだ。
ここで本当のことをいうと、根掘り葉掘り聞き出されるだろう。
秋瀬さんとわたしの曖昧な関係を周りに知られるわけにはいかない。
「だよね」ホッとしたようにいうと、
「また飲みに行こうね。次は、あたしも飲ませすぎないように気をつけるよ」
と、ほんとかどうか疑わしい台詞を吐く飯野先輩。
「今度はウコン買ってあげるから」
ニヤッと笑いデスクまで戻って行った。
……やっぱり、潰す気あるんじゃないですか?
今の話から憶測するに、わたしは、秋瀬さんと帰り際に遭遇でもしたのだろう。
で、どういうわけか飯野先輩から秋瀬さんにバトンタッチされたと。
同じ方面なんて、まったくのデタラメだ。
秋瀬さんはわたしの家を日曜日の夜まで知らなかったし、同じ方面でもなんでもない。
土曜日でなく日曜日の夜なのは、それまで帰してもらえなかったから。