毒舌王子に囚われました


「うるせぇよ。今に見てろ。抜いてやるから」
闘志を燃やす佐久間くんに、

「ムリムリ。ところでさ、秋瀬さんったら、あの橋本さんからの誘いまで断ったみたい。理想高すぎだと思わない?」
秋瀬さんのことしか頭にない様子の莉菜。

橋本さんというのは、ひとつ上の先輩のことだ。社内で1番可愛いと噂されている。

面倒くさそうに、
「やっぱりゲイなんじゃねぇの?」とだけ答える佐久間くん。


……それは違うよ。

秋瀬さんは、理想が高いわけではない。基本的に、他人に無関心なんだ。

そして、秋瀬さんの〝そういう対象〟が女だということを、わたしは痛いくらいに知っている。

身をもって、知った……。

あぁ、また、思い出してしまった。

このスーツは、秋瀬さんに洗ってもらった。

このスーツの下には、秋瀬さんに時間をかけてつけられた印が、数え切れないくらい残されている……。

そんなことを莉菜と佐久間くんに知られたら、なんて思われるかな。

わたしは、秋瀬さんと、秘密を共有している。

……ドキドキして、仕方ない。


と、秋瀬さんがすぐ近くまできたので、莉菜も佐久間くんも話を中断した。

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