毒舌王子に囚われました


すれ違うとき、肩も触れていないのに、突進でもされたかってくらい心臓が大きく鼓動した。

息も……苦しい。

わたしに、気づかなかったのかな。

それとも、見えたけど無視したの?


秋瀬さんが行ってしまうと、
「あー、目の保養」と莉菜がつぶやく。

「そんなに好きなら告れば?」

佐久間くんの言葉に再び心臓がドクンと波打つ。

誰かが秋瀬さんに告白するなんて考えたくないし、ひょっとしたらオッケーするかも……という未来を想定してしまうから。

あんなに潔癖なんだ。莉菜が告白したところで寄せ付けないだろう。

でも、わたしに触れられたように、もしかしたら莉菜にも触れられるかもしれない。

そんなの、嫌だな……。

嫌がる権利なんてないのに。わたしは、秋瀬さんの彼女じゃないから。

こんな関係、辛いだけだ。でも、選んだのはわたし。選ばずにはいられなかった。

「土生は、男の話に乗っからないよな」

「えっ……」

「土生ちゃんは、うぶだもんね?」

そんなことないよ、莉菜。

秋瀬さんと身体の関係を持ってしまったと、今ここでそういえば、どんな反応をされるだろう。

軽蔑……されるかな。


そういえば、2人は金曜日の飲み会に参加していたよね。

なのに、秋瀬さんとわたしが一緒に帰ったことに関してはノータッチだ。

ということは、莉菜と佐久間くんは、わたしが飯野先輩から秋瀬さんにバトンタッチされたことを知らないのかな。

知っていたら、莉菜が黙っているはずないと思うし。

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