毒舌王子に囚われました


ご飯を食べ終えオフィスに戻る、その途中。

「今日、仕事終わったら一緒に飯行こうよ」

佐久間くんに、誘われた。

「今日……? なにかあるの?」

「飲み会のときほとんど絡めなかったろ。もっと土生と話してみたいんだ。都合悪い?」

都合悪くなんてない。帰って一人でご飯を食べて寝るだけだ。

「ううん。大丈夫だよ」

「なら、仕事終わったらどこかで時間潰してて。俺今日そんなに遅くならないから」

「わかった」

「連絡先、交換しよ」とスマホを取り出す佐久間くん

男の子と連絡先を交換するのは、これが初めてだ。

さすが佐久間くんというか。さらっと食事にも誘うし連絡先だって交換しちゃうんだもんな。

わたしには真似できない、と考えながら連絡先を交換する。

そういえば秋瀬さんの連絡先、知らないなぁ。

知っていたところで、あの人が仕事でもないのに電話やメールをするなんて考えられない。

『携帯には数億の雑菌が付着していて……』なんてうんちくをたれられかねないな、と考えると笑えてきた。


「やった。これで、残りの仕事頑張れる」

佐久間くんがガッツポーズして嬉しそうに笑ったのは意外だった。

こういう、素で可愛い顔をできちゃうところが母性本能をくすぐるというか、女の子を放っておかせないのだと思う。

たらしはたらしでも、天然たらしというやつか。

連絡先の交換だけでこんなに喜んでもらえると、さっきの告白は、本気なのかな……という気にさせられる。

いや、まさかね。

同僚とご飯なんてシチュエーション、珍しくもなんともないよ。

と、そのとき。近くの扉があいた。


あ、と思わず声に出しそうになった。

たまたま会議室から出てきたメンバーの中に、秋瀬さんがいたから。

また会えた。同じ会社なのだからなにも驚くことはないけれど、それでも姿が見れたのが、嬉しい。

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