青野君の犬になりたい
青野君と私はそれから以前のように、同僚の葉山さんと青野君に戻った。
いや正確に言うと、以前のようにではない。
一緒に残業をした後でご飯を食べに行くことも、2人でランチを食べることもなくなった。
普通に接しているようで、とても不自然に自然な素振りを装っていた。

よかったじゃない、と英子は言う。
「そんな不均衡な関係、続くわけなかったのよ。今度こそいい男集めてコンパ開いてあげるから」
そう慰めてくれ、ついでに「でもブルーフィールドの息子なら、京都のあの有名な旅館、割引いてもらえないかしら」などと都合のいいことを言う。
私はすべてに対してうん、うんと気のない返事を返すばかりだ。

勝手に彼女にしてほしいとお願いしておきながら、勝手に自爆して青野君から逃げた。
けれどストンと落ちた恋の穴から這い上がれずにいる。
恋は終わっても、好きという気持ちは終わらない。
私はしばらくは、この穴の中で悶々とするのだ。
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