青野君の犬になりたい
「もしもし」
「あ、七海さん? 明日、時間空いてない? 急に代々木のドッグランで譲渡会をできることになって、
人手が足りないの。お願い、手伝ってくれない? 
あと車で犬を運んでくれる親切な人、誰かいないかしら? 今週は田中君が旅行中でいないのよ」
ワンフレンドの会長の武田さんが一気に話す。
譲渡会の際、会で世話している犬たちは、
通常武田さんと田中君という若者が車で会場まで連れていくことになっている。
いつも冷静な武田さんがこんな時間に私に連絡をよこし、こんなにも早口でお願いしてくるのは
よほど焦っているのだろう。
私は抱きしめていた青野君との初デートへのふわふわした気持ちを床におろした。

「わかりましたお手伝いします。
車と運転手を見つけるのは難しいかもしれないけど、捜してみます」と告げた。

< 29 / 125 >

この作品をシェア

pagetop